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hearing the unheard voices

小鳥たちと対話し、自然と人とが調和できるバード・サンクチュアリを創立しています。http://homepage2.nifty.com/birdsanctuary/index.html

『愛しき白鷺』

宇宙を舞うような気分になったり、愛しさで胸が締め付けられたり、瑞々しい光で洗われたり -- 時には泣いてしまったりする。

美しい写真集だ。

何度めくっても、何故か手を合わせて合掌してしまう--

白鷺(正確には、白い鷺にはダイサギ、チュウサギ、コサギがいる)と大空が織り成す、鮮やかな、あるいは幽玄な調和、その神々しいほど崇高な命の営みが迫ってくる。

『愛しき白鷺』


副題に、『永遠に幸あれ わが心の友』とある。

写真家の絹針弘己さんは、警戒心の強い白鷺の写真を撮るため、来る日も来る日も営巣地の雑木林に通い、雛を育てるサギたちが安心して彼を迎え入れるようになるまで、大変な努力を積んだそうだ。長い時間をかけて、サギたちは、彼を受け入れるようになった -- 彼に“落し物”をプレゼントするまでに(打ち解けてくれないと、“落とす”どころではないらしい)。
 サギに“落し物”をされた作業着を着続けて、雑木林でひたすら待つ。そんな撮影をすることで、これほどまでにサギの命、サギの生き方に接近することが出来た。

究極の「異種間コミュニケーション」ですね。絹針さんがそう思っているだけでなく、白鷺たちにとっても、彼は<永遠に幸あれ わが心の友>なのではないかとまで感じてしまう。

写真の一枚一枚は、言葉を添えなくても、サギが生きていること ―― 一つの命であり、天空を舞い、愛を交わし、厳しい自然と向き合い、新しい命を育てようとする命の営みをする生きものであること ―― を力強く、美しく、伝えているように感じる。しかも、その命の営みの、神々しいような眩しい輝きの瞬間に、シャッターが切られた。

空や風と見事に調和した雄大な飛翔--
白い羽に光る目、目元の涼しげな緑色、飾り羽の艶やかさ--
朝露の飛沫と戯れる白い翼--
木々の緑の上でのカップルや親子、仲間同士のむつましい姿--
「瞬光」「霧翔」「寂光」「暁に舞う」・・・様々な光--
天空で、仲間と、光と、自然の中で、真っ白な姿で、こんな風に
生きるのって素晴らしい。


今日は、久しぶりにこの写真集を手に取った。

毎年、つくば市を含め、各地で<サギ問題>が起きている。
 白鷺たちやアマサギが、住宅地に近い林などを集団で営巣地(=コロニー)としてしまうために、周辺の住民の方々が悪臭や汚れに悩み、また感染症などの影響が疑われているために(現在までのところ、感染症の例は現実にはない)、地権者に訴え、営巣地の木を切り倒し、消臭剤などを撒き、追い払う。つくば市の1例では、子育て中であったため、サギのヒナが放棄され、道路などに出てきて轢かれてしまった。
 現実に被害に遭われている住民の方たちは大変な思いをされているので、何としても解決しなければならない。しかし、サギたちも命ある生きものだ。
 かつての雑木林や里山が住宅化すればするほど、人と、人以外の野生の生きものとの過密な接近や不幸な事故は増えるだろう。そして、「感染症」のような問題が生じ、様々な情報がマスメディアを通じて横行すればするほど、人と人間以外の生きものとの摩擦や乖離は進むだろう。さらに、人以外の生きものの命に無関心な人が増えれば増えるほど、そうした命の声は、人間にも届かなくなるだろう。そのとき、人間の中の”生きもの”性や自然は、どうなってしまうのだろう。
 どうすれば、人間とサギが共存していけるのだろう。

サギのことを想うとき、似たような環境で見かけたはずのトキやコウノトリのことも想う。トキはもう、日本にいなくなった。コウノトリの野生復帰をかけて、現在、豊岡市の人々や関係者の方々の努力は大変なものである。
 この夏も、サギは、つくば市の上空を飛んでいく。朝や夕方、よく見かける。彼らは、ここに居続けてくれるのだろうか、それとも、生きる場を追われて、新たに生きる場を探し続けているのだろうか。

この写真集が、途方もなく美しい故に、そしてその美しさが、白鷺の命に近づけるという才能に恵まれた写真家によって、奇跡でしかない一瞬のものであるが故に、打ちのめされてしまう。

俳優の西田敏行さんが「天の羽衣に恋した男 絹針弘己氏」という前書きを書いている。

 今、人間は”時代”という
 燃料も大量に要し、排気ガスも
 沢山吐きだす、巨大な車に乗って
 いつ 来るとも知らぬゴールを
 めざして爆走している、
 その後には、美しい花や、やさしい緑が
 踏みつけられ 物云わぬ鳥や獣達も
 その爆音に恐れおののき瀕死の状態で
 その轍を見つめている。
 絹針弘己さんは その車から飛び降りた
 車窓に、美しい白鷺の命を賛える舞を
 見たからだ。氏は魅せられた この美し
 さを“写真”という媒体を通して留めて
 おきたいと想ったからである・・・・・。
 私はかつて ”池中玄太”という
 ぶきっちょに人を愛し、鶴を愛し
 スクープ写真はうまく撮れないけれど
 鶴の写真は<鶴実>にものにする
 カメラマンを演じた 私はその玄太から
 いろいろな「こと」を教わった。
 そして彼の示す不器用な正義に大いに
 賛同の気持ちを抱いた。
 今 絹針氏の熱意と愛によって
 写し出された白鷺を見るにつけ
 エコロジーを声高にとなえずとも
 私達が本当に大切にしなければならない
  ”もの”や”こと”を
 静かに やさしく教えてくれる。
 今日も絹針氏はカメラをかかえて
 待っている。
 あたかも”天の羽衣”の飛来を心待ちに
 している”あの男”のように。


どうです? 研究室に1冊ありますので、お近くにお寄りの方は、めくってみてください。

(愛しき白鷺 絹針弘己写真集 日本写真企画 1993)


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