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hearing the unheard voices

小鳥たちと対話し、自然と人とが調和できるバード・サンクチュアリを創立しています。http://homepage2.nifty.com/birdsanctuary/index.html

Kinship With All Life

「hearing the unheard voices」に関わることが書かれている本と言うと、広い意味ではほんとに沢山あるのですが、その中でも“活きのいい”本の読書ノートをとっていきたいと思います。一般書も学術書も、古典も最近のものも、“活きがいい”ものは扱っていきたいと考えています。

今、手元にあるのが、最近文庫化されて読み返したばかりのJ・アレン・ブーン著『Kinship With All Life』だ。邦訳は『動物はすべてを知っている』 ―― 文庫化される以前、講談社から出版されていたときは『ヒトはイヌとハエにきけ』だった。

一言で言うなら、この本は、“すごいところまで行った”という点では一、二を争う「異種間コミュニケーション」についての本だと言える。映画界で活躍し、「銀幕王国の聖フランシス」と呼ばれるブーン自身が、様々な生きものと現実に関わって、その関わりの中で彼らに多くのことを教えられていく。その教えの中核となるのは、あらゆる生きものはつながっており、そうしたつながりを宇宙的な視野に立って眺めるならば、その源のただ一つの存在である、ということである。ブーンの体験した「異種間コミュニケーション」の様々な興味深い逸話の中から、そうした教えが感得されていくということも、この本の真骨頂であろう。

「異種間コミュニケーション」研究を、西洋近代科学からの延長線上にある現代の科学技術先導社会の真理体系が唯一のものであるとする視点から眺めるなら、この本で語られている内容は、“怪しげ”として一蹴されてしまうかもしれない。あるいは、“はやりの”“ニューエイジ好み”のファンタジーのジャンルと片付けられてしまいそうだ。
 ブーンは、ハリウッドスターとなったジャーマンシェパード犬とたまたま暮らすことになり、そのイヌの威厳と確信に満ちた生きかたに魅せられるうちに、多くのことをこのイヌから教えられるようになり、ついにはヒト言語によらない沈黙のコミュニケーションによって、彼との聖なるつながりを感じることが出来るようになる。彼らは、命あるものとして互いにつながっており、しかも大いなる「存在」「宇宙のこころ」の下に同じ仲間であることを知るようになる。
 “怪しげ”と本を放り投げないで、ブーンが動物たちとの関わりから感じ取っていったことを一つの世界観、生命観として理解するなら、この本は、わたしたちに、自分の存在や他者の存在が一体何であるか、自分が何処から来てどこに向かっているのか、についての深遠な洞察に向かわせてくれる。
 「異種間コミュニケーション」についてのいわゆる“科学的”研究は、「動物にこころはあるのか」などという議論でさえ解決の糸口を持たず、雲の中に頭を突っ込んだままのような不消化感をいだかせる。そうした“科学的”研究では、“最も脳が大きい”が故に“人間と同程度に知的”と仮定した霊長類やイルカ・クジラに、ヒト言語を教え込めるのか、その学習成果はヒトの能力と比べてどれくらい低いのか、を測ろうとしている。それとは対照的に、ブーンは、ちっぽけなハエやアリやミミズとも、出逢ってご縁さえあればその相手と敬意ある態度で向き合い、相手から何かを学び、生きものとこころを通わせる「異種間コミュニケーション」のエピソードを書いている。真偽を問うのも良いし、どちらが正当かを論ずるのも良いかもしれないが、“そこにある命を命として認める”“その命と自分の命とのつながりを感じる”“そうした命、命のつながり、その源泉が聖なるものであると気付く”というブーンのあり方は、決して決して見下してはならない。

自分がすでに持っている観念、前提、知識から世界を分割すれば、予め見えていること以上のことは見えない。でもわたしたちは、他者という素晴らしい存在と出会い、そこから新たなことを学ぶことが出来る。自分の境界を越え、たがいの境界を越えて、そこにある何かを新たな目で見つめることが出来る。その他者が、イヌであっても、スカンクであっても、ミミズであっても。

ブーンは、その「何か新たな目で見つめる」ことが出来た。その秘訣? --彼について解説しているポール・ハーマン・レナードおよびビアンカ・レナードは、ハリウッドの聖フランシスコと呼ばれたブーンを、「自然との親和力を深めることに卓越していた」と評している。

けっして動物たちを「畜生」としてみくだすことなく、生命という大いなる冒険におけるよき仲間として、かれらと対等に接した。生来もちあわせていた宇宙感覚によって、ヒトと動物とのあいだにある一切の人為的な区別をこえて飛翔することができたのである。
(『動物はすべてを知っている』 前書き「著者J.アレン・ブーンについて」)

さらにブーンは、「未知の領域を探索する冒険家」であり、様々な世界に生きる人と親交を結ぶことの出来る魅力を持っていた。そして、アメリカ先住民を尊敬し、人間以外の生きものを兄弟とみなし、生きものと親しくなれる先住民の力から多くを学んだ。特に、相手に対するヒトの想念は、「放射されている」とみなす先住民たちの教えを受けて、身振りと「直感」、「沈黙の言葉」による会話を学び取っていったことが興味深い。

アメリカ先住民やベドヴィン(アラブ系の遊牧民)の動物観を学んだブーンは、「万物は大霊が必要とし、大霊が利用するだけのものではなく、人間とその兄弟姉妹たちが活用するためのものである」という思想が、特定民族だけに独創的なものではないことに気付く。そして、動物と自分とをおなじ精神的・霊的レベルに置いて、様々な生きものが織り成す世界を見つめ直す。

けものに尋ねるがよい、教えてくれるだろう。
空の鳥もあなたに告げるだろう。
地を這うものに問いかけてみよ、教えてくれるだろう。
海の魚もあなたに語るだろう。
かれらはみな知っている。
  それがとこしえの道であることを。
すべて命あるものは、肉なる人の霊も
  とこしえの道の手の内にあることを。
   (ヨブ記 第一二章七-一〇節)

わたしたちは人間以外にも、沢山の兄弟姉妹を持っており、彼らに問いかけることも、彼らと語り合うこともできるのだ。

う~ん、だからと言うか、だけどと言うか、邦訳の題は気に入らないな。この本の翻訳者の上野圭一氏の訳は、たいていは好きなんですけど、原題の『Kinship With All Life』(全生命との血縁関係)が、やっぱり大切なテーマなんです。しかも、LivesでなくてLifeだということにご注意。全ては、源のところで一つなんです。

ブーンは「フレディー」と名づけたイエバエとも、親しくなる。昼間、彼の家を訪れるフレディーに、“人間ならすぐに叩き潰す、いとわしい生きもの”という観念や条件付けを捨てて、敬意を持ってまっすぐに向き合ったとき、両者の出会いの中で、様々な不思議なことが起こる。最後にフレディーは、ゆっくりと輪を描いて飛び、朝の黄金色の光の中に溶け込むように見えなくなる。

全ては源のところで一つ。
そのつながりを取り戻し、調和をもたらしゆくコミュニケーションが、今、わたしたちにとって最も大事なコミュニケーションなのではないか。

(J.アレン・ブーン 『動物はすべてを知っている』 ソフトバンク パブリッシング <SB文庫<)
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