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hearing the unheard voices

小鳥たちと対話し、自然と人とが調和できるバード・サンクチュアリを創立しています。http://homepage2.nifty.com/birdsanctuary/index.html

森の秋の香 ~シラネセンキュウ~

  山の空気はすっかりひんやりしてきている。
  おなじみのノコンギクやシロヨメナやツリフネソウ
  もあるし、カメバヒキオコシやセキヤノアキチョウ
  ウジの青紫色の花を見つけるかもしれない。
   いや、それよりもなによりも、この澄んだ冷涼な
  空気の中で味わう、シラネセンキュウやヤマゼリの
  清々しい香りのこころよさ。わざわざそのために出
  かけて行っても悔いはしないだろうと思う。
   猫も杓子もみんながみんな紅葉の名所に殺到する
  というのは、あまりにつまらないし、もったいない
  話だ。
  (長谷川哲雄 『野の花さんぽ図鑑』築地書館より)

この『野の花さんぽ図鑑』(愛読書)にある秋の山の、シラネセンキュウやヤマゼリの香をどうしても、一度でいいから、嗅いでみたいと感じた。

秋に山に出ても、出逢った覚えもなくて … そんなとき、シラネセンキュウ(白根川芎)なら、沢筋林縁などに生えるとあって、もしかしたら my bird sanctuary でも育つのではないかしらと閃いた。山ではないけれど、じめじめした林ならあるから。

日本古来のゆかしい野草、絶滅の危機にさらされかけている在来種の植物を少しでも残そうと沢山植えたけれど(その中には、上の文章なら、ノコンギクやツリフネソウ、セキヤノアキチョウジなどもあったけれど)、荒れた竹林、水はけの悪い土壌では、消えてしまう野草も多い。それも何とも可哀想で、最近では土地に合う植物、何とか耐えて森を豊かにしてくれそうな植物とわかるまでは、かなり慎重になっていたけれど、シラネセンキュウはピンときた。

セリ科の優雅な植物。先の長谷川先生の本には、「レースのような白い花も優美だし、なによりもその香りは気分をリラックスさせ、リフレッシュさせる」とある。

この香に対する憧れ、夢が大きく膨らんだ。

思い切って、いつもお願いしている日本古来の数少なくなっている野草を(暴力的に採取するのではなく)、種の保存・栽培されている方のお店にそっと問い合わせると、しばらくしてから苗が入荷できる旨を伝えてくれた。

それが昨年のことで、そっと大切に苗を植えたまま見守っていたが、夏の間は草木がジャングルのように生い茂り、消えてしまうのではないかとはらはらしていた。けれど--

shiranesenkyu1

秋も深くなった今、植えたあたりにそっと分け入ると、すっくと立ったこの草の見事な白い花々がすぐに居場所を教えてくれた。

森の中での恋人との逢瀬 -- そんな感じで急いで、でも気を付けて、駆け寄った。

そして早速、香を確かめた。

真夏に開く大輪のヤマユリのように、甘く濃厚な香が辺りに広がっているわけではない。

そうではなくて、秋の森の香 -- 濡れた落ち葉や土の香、前日降った雨の香 --のなか、嗅覚を研ぎ澄まして、探し分け、感じなくてはならない。

近くまで来て、そっと跪いたとき、感じた(出逢った)。
空気の精に出逢うような感じだった。

その秋の香は … 無理に考えれば「清々しい」「爽やか」「ゆかしい」「フレッシュ」「澄んだ」「透き通った」といった言葉が浮かぶが、とても表現できない。よくあるアロマやワインの芳香とは、とても比べようもない。ましてや、香のスプレーなどで使われている表現は、とても使えない。
 森の、植物の香なのだから、と言えばその通りであるが、その中でも、また、夏の花にありがちな、生命力溢れるエネルギッシュな香ともまた違う。外側に放出する、植物の命の香とは、ちょっと言い難いところがある。

森の、秋の、香。内側に染み入る香。わたしのハートの内側、奥の方、芯のところを透き通らせる香。

… 森も、森の命も、秋はありようが全く違うんだ。


shiranesenkyu2



森のなかの、鏡の反射のような光。

夕闇が、急ぎ足で光を追いかけてくる。

静かに、ひっそりと、ものみな澄んでいく。




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